新型911 GT3 RSのシャシーは、一貫してサーキットでの使用を想定して設計されています。ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションは、高いドライビングダイナミクス要件に合わせて大幅に調整されています。トレッドがワイドになったため(911 GT3から+29 mm)、ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションのリンクもそれに応じて長くなっています。ダウンフォースを増加させるために、形状はドロッププロファイルになっています(エアロダイナミクスのセクションを参照)。さらに、ダブルウィッシュボーンの構造が最適化されています。
高速からのブレーキング時でもフロントとリアのアクスル間の出力バランスが維持されるよう、シャシーエンジニアが車両のピッチングを大幅に低減しました(アンチダイブ)。そのため、911 GT3 RSのフロントアクスルでは、ロアートレーリングアームのフロントボールジョイントが下方に移動されています。その結果、アームがより急勾配になり、ブレーキをかけると圧縮動作に対抗するトルクが発生します。高速から急ブレーキをかけると、エアブレーキ機能がホイールブレーキを強力にサポートします(詳細はエアロダイナミクスのセクションを参照)。
また、シャシーエンジニアはスプリングレートを変更することで、マルチリンク式リアサスペンションを過酷な運転条件に適合させました。車高、キャンバー、スタビライザーの剛性は、アクスルごとに調整できます。すべてのシャシーベアリングのボールジョイントは、モータースポーツに由来します。このボールジョイントは耐摩耗性に優れているだけでなく、シャシーをボディにしっかりと固定できます。これにより、走行特性がさらに正確になります。
可変ダンパーシステムのポルシェ アクティブサスペンションマネジメント(PASM)、ポルシェ トルクベクトリング プラス(PTV Plus)、リアアクスルステアリング、ポルシェ スタビリティマネジメント(PSM)にもスポーツチューニングがあります。スタビリティコントロールシステム(ESC)およびトラクションコントロール(TC)は、ステアリングホイールで複数の段階で調節および完全に無効にすることが可能です。
911 GT3 RSにはノーマル、スポーツ、トラックの3つの走行モードがあります。「トラック」モードでは、基本設定を個別に調整できます。例えば、フロントとリアアクスルのダンパーのコンプレッションとリバウンドレベルを、個別に調整できます。リアディファレンシャルロックとトラクションコントロールも、ステアリングホイールのロータリーノブで調整できます。同様にモータースポーツの操作/表示コンセプトが採用され、すばやく直感的な操作が可能です(インテリアのセクションを参照)。
エアロダイナミクス設定に応じた効率的なブレーキエアガイド
新型911 GT3 RSには、標準でセントラルロック付き鍛造軽合金ホイールが装着されます。フロント275/35 R 20、リア335/30 R21の公道走行可能なスポーツタイヤを装着したことで、高レベルなメカニカルグリップを保証します。
タイヤプレッシャーモニタリングシステム(TPMS)には、モータースポーツ固有の機能があります。サーキットモードでは、トラック走行開始時にタイヤが冷えていて空気圧が低いことが考慮されます。
シングルクーラーコンセプトへの変更によって、ブレーキエアガイドを大幅に改善することができました。フロントエンドの4つのサイドインテークは、フロントブレーキシステムの冷却専用です。ブレーキディスクとフリクションリングを冷却するためにどのエアダクトを使用するかは、その時に911 GT3 RSが低ダウンフォースレベルか高ダウンフォースレベルかによって異なります。リアアクスルのブレーキシステムは、アンダーボディの2つのエアインテークを介して冷却されます。
フロントアクスルには、それぞれ6つのピストンと直径408 mmのブレーキディスクを備えたアルミニウムモノブロック固定キャリパーブレーキが採用されています。911 GT3と比較すると、ピストン径が30 mmから32 mmに拡大されています。さらに、ディスクの厚さは34 mmから36 mmに増しました。リアアクスルには、引き続き380 mmのブレーキディスクと4ピストンの固定キャリパーブレーキが搭載されています。
オプションのポルシェ セラミックコンポジットブレーキ(PCCB)では、フロントアクスルに410 mm、リアアクスルに390 mmのブレーキディスクが装備されます。
ご要望に応じて、最低地上高を増やすリフトシステムも装備できます。約50 km/h以下の速度で、GT3 RSのフロントアクスルを約30 mm持ち上げることができます。その他の特徴として、自動リフト機能「スマートリフト」があります。車両の現在位置(例えば、自宅車庫入口のやや急な坂の前)を位置点として保存し、インテリジェントにリフト機能に使用できます。つまり、その後にこの地点に来ると、フロントアクスルが自動的に上昇するようになります。